森林太郎訳『ファウスト』出版から百年

1885年12月27日 

夜井上とアウエルバハ窖(こう)*Auerbachskeller に至る。

ギョオテの「フアウスト」Faust を訳するに 

漢詩体を以てせば如何(いかに)などと語りあひ、 

巽軒は終に余に勧むるにこの業を以てす。 

余もまた戯に之を諾す。 


* ライプツィヒの中心街にあるレストラン。 

ファウスト伝説に取材した十六世紀風な壁画で有名だった。 


 森鷗外『独逸日記』(ちくま文庫)より

メフィスト ライプツィヒ留学時代の鷗外井上巽軒 晩年の鷗外 

ワイン樽の横にファウストアウアーバッハス・ケラーの壁画)